ブログ
BLOG

HOME > ブログ > 「歩けるのに、歩かせない」――自立支援と安全のはざまで

blog

「歩けるのに、歩かせない」――自立支援と安全のはざまで

昨日、新規のご利用者様を訪問しました。

男性で87歳くらい。認知症はあるものの、居室内でトイレにも行けています。

ケアマネージャーさんからは「歩けるようにしてほしい」というご依頼。

しかし現場では、すでに歩けている。

では、何が課題なのか。

それは――

“歩けるのに、歩かせない(あるいは歩かせられない)問題” でした。

現場で起きる「判断の分裂」

施設のルールとしては「車椅子移動が基本」。

安全管理の観点から、それは理解できます。

けれど実際の現場では、スタッフさんの判断が分かれます。

  • 「歩いていいですよ」

  • 「歩いてはダメ。車椅子でお願いします」


この分裂は、誰かが悪いわけではありません。

むしろ、責任感があるからこそ起きます。

事故が起きた時の怖さを、現場は知っているからです。

自立支援の目的は「できるを奪わない」こと

私は訪問の現場でいつも思います。

人は“できる”が残っているうちは、そこに希望があります。

歩くことは、移動手段以上に「自分で人生を動かせる感覚」そのものです。

だから私は、基本的に 歩ける可能性があるなら歩いてほしい と考えています。

ただし――

安全を無視していい、という意味ではありません。

二択をやめて「条件付き歩行」にする

現場の対立を解くカギはシンプルです。

「歩いていい/ダメ」の二択をやめること。

代わりに、次のように設計します。

1)歩く条件を決める

  • どこまで(居室〜トイレなど)

  • いつ(昼のみ、夜間は車椅子など)

  • 誰が(見守り、軽介助)

  • どんな環境で(動線整理、手すり、靴の統一)


2)中止条件を決める

  • ふらつきが強い

  • 方向転換が不安定

  • 焦りやパニックが出る

  • 目的が曖昧で徘徊傾向

  • 体調不良が疑わしい


“やめる基準”があると、安全側の不安が減り、結果として歩行の機会が守られます。

3)チームで共有する

判断が分裂する一番の原因は、基準が言語化されていないこと。

ケアマネさんも含めて、短いメモでいいので統一します。

現場が迷わない状態を作ることが、事故予防になります。

「歩かせたい人」ほど、安全設計までやる

私の立場は「歩かせたい側」です。

だからこそ、強く思うことがあります。

歩かせたいなら、止める基準まで含めて設計する。

その上で、ルールの範囲内でできる最大の自立支援を探す。

人生は一回。

「ダメダメ」だけでは、本人の“できる”が静かに失われていきます。

しかし同時に、安全を軽視すれば、本人も施設も守れない。

この難しいテーマの中で、私はこれからも

希望(歩く)と安全(守る)を両立させる現場づくり に取り組んでいきます。

SHAREシェアする

ブログ一覧

HOME > ブログ > 「歩けるのに、歩かせない」――自立支援と安全のはざまで

© 2025 訪問・マッサージ エンゲルハント